領域概要

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 一個の細胞からスタートした生物は、世界を感知して行動するために適切な神経ネットワークをもつ脳を作る必要がある。脳神経ネットワークは優れた情報処理システムであることが明らかとなってきており、脳の数理モデルであるニューラルネットワークモデルは哺乳類脳の活動様式のすぐれたモデルである。脳神経ネットワークという洗練された情報処理システムが構築されるメカニズムを解明し、その知見を元に脳神経ネットワークが形成される過程を数学的に記述することは、神経科学だけでなく、革新的人工知能の開発、ブレイン・マシン・インターフェースの工学的構築、脳疾患への新たな治療戦略の策定など、多くの分野に計り知れない影響を与えうる。

 発達期の神経系において感覚入力が活発になる前から神経細胞が自発的な活動(自発神経活動)をしているという発見は多くの科学者を魅了してきた。この発見以来、自発神経活動が神経細胞の正常なシナプス結合やその再編成に必要であることが示されてきた。さらに近年のイメージング技術の進歩により発達期の自発活動は集団レベルで高度に組織化されていることが明らかにされつつある。それらの自発活動パターンは時間的空間的に多様であり、発達にともない活動パターンは変化する(脳多元自発活動)。わたしたちは、これらの発見から自発活動は個々の神経細胞の発達を調節する局所的な情報を担っているだけでなく、神経ネットワーク全体のデザインを可能にする多くの情報を持っていると考えた。この仮説を検証するために、実験科学者と理論科学者を融合させた研究領域を立ち上げ、発達期自発活動パターンの発生と変化を実験データから理論まで系統立てて研究することで定量的に記述し、組織化された自発活動パターンが脳にとってどのような意義があるのかを突き止める。

領域組織図

計画研究

  1. A01
    発達期多元自発活動による小脳ネットワークのデザインビルド
  2. A02
    発達期大脳における多元自発活動と回路形成の因果関係の解明
  3. A03
    発達期脳多元自発活動の数理 モデルとその学習理論の構築
  4. A04
    発達期脳の自発同期現象の数学解析